民俗女子の自由帳

~この世は不思議が多すぎる~

【怪談・奇談】秩父で集めた川の怪談2種

【大正生まれの男性から聞いた話】

自分から数えて三代前の先祖の話なんだけど。ある年のお盆の昼ごろ、家の前を通りがかった女の子にぼたもちをあげたんだと。そうしたらその日の夕がた雷雨があって、川に放った投網に大きな魚がかかった。で、料理しようと腹を裂いたら、昼間のぼたもちが出てきたからびっくり。あまりに気味が悪いから、「こんな魚、食えない」と川に捨ててしまったそうだよ。もしかしたら、その子がなんらかの理由で捨てたぼたもちを、魚が偶然食べただけなのかもしれないけどね。

 

※なんだか柳田国男の『魚王行乞譚(ぎょおうぎょうこうつたん)』に紹介されていそうなお話です。「ある日、突然やって来た見も知らぬ相手に食べものを振る舞う。その後、獲った魚の腹からご馳走した食べものが……」というのは一種のテンプレで、そんな有名な話をまさか秩父で採取できるとは思ってもいませんでした。

ただ、個人的に疑問なのは、「お盆に殺生(投網漁)していいの?」ということ。お盆だからこそ不思議なことが起こったんだよ、という理由付けにしたいのかもしれませんが、ちょっぴり納得がいきません。また、この手の話は人間に化けた魚が「川を堰き止めるな」とか「毒流し漁法はやめてくれ」とか、なにかしらお願いをするパターンが多いのですが、これにはそういったものが一切なし。ひょっとしたら、「お盆に投網はやめてほしい」と諭すシーンがいつのまにか抜け落ちて伝わったのかもしれません。

 

【昭和14年生まれの男性に聞いた話】

落合にある大きな淵には真っ白な蛇がいて、娘に化けるそうだ。酒の席で友人に聞いた話なんだけどね。

 

※実は、この淵のそばには普寛(ふかん)という神社があり、そこの娘が夜這いをかけてくる淵の主にさらわれたという伝説があります。夜這いをかけてくる男は人間ではない、というのもおだまき伝説に代表されるテンプレで、淵の主→蛇からの連想が、いつのまにか蛇娘にすり替わってしまったのかもしれません。

以上、有名な伝説の変化形が秩父でふたつも採取できたので、とてもうれしかったというお話でした♪