民俗女子の自由帳

~この世は不思議が多すぎる~

【怪談・奇談】秩父で集めた山の怪談3種

大学時代、埼玉県の秩父で伝説や昔ばなし、世間話(怪談、奇談)を集めていました。そのとき手に入れた話の中でも、山にまつわる選りすぐりのものを紹介したいと思います。

 

【80代の女性から聞いた話】

猟は11月から解禁になるけど、ひのかんりん(漢字で書くと「日野管林」?)という場所にはよく猟師が入ったんだ。でもそこには、素手で弾丸を受け止める化けものがいて、一度山に入ると二度と出られなくなるって怖がられていたねぇ。

 

※まるでハエでもつかむように、「こう!」と弾丸をつかむ仕草をしてくれたおばあちゃん。「日野管林」でググっても出なかったのでさらに調べたところ、どうやら遭難者多数の熊倉山(標高1426.5メートル、武州日野駅か白久駅が最寄り)らしいということがわかりました。この山は「迷いやすい」「不気味」「熊が出る」「眺望が悪い」と悪評だらけ。登山道の途中に朽ちたトタンが散らばる営林署跡地(現地の看板には「官舎」と表記)があるので、営林署に理された日野「日野管林」なのでは? とアタリをつけました。ちなみに「秩父の魔境」と紹介している人までいて、ちょっとビビりました。

 

【50代の女性から聞いた話】

猟師のおじいさんから聞いた話なんだけどね。あるとき、その人がバンドリ(ムササビ)を捕りに、夜の滝ノ沢山中に分け入ったの。すると、きれいな女の人が現れて、しきりと手招きしてくるんだって。その手はまるで十能(囲炉裏で使うシャベルのようなもの)みたいに大きくて、どう見ても人間じゃない。で、取っつかまえてやろうと自分の手を出したところで我に返り、足元を見るとあと数歩で崖。女の人もいつの間にか消えていてびっくり。結局、気持ちを落ち着かせるために煙草を吸い、「人を馬鹿にしやがって……」と悪態をついて帰ってきたんですって。

 

※寂しい山にひとりだと、「人に会うとうれしい!」じゃなく、「人に会うと怖い!」になっちゃうんですよね。ちなみに滝ノ沢地区は秩父のかなり奥で、ダムの立ち退きで今は無人と化しています。

 

【60代の男性から聞いた話】

子どものころ、山小屋にひとりで泊まったら、夜になってなにかが踊っているようなざわめきや、土を掘っているような音が一晩中聞こえてきてにぎやかだった。自分の家の山だから怖くはなかったけれどね。今はもうその小屋はないかもしれないな。

 

※山の中って意外とにぎやかなんですよね。しかも翌朝、小屋の外に出ると野生動物が寝た跡(落ち葉が楕円形にへこんでいる)なんかが意外と近くにあって驚かされます。ひとりだけどひとりじゃない。大きな生きもののお腹の中にいるような気がして、妙な安心感と「どうあがいても勝てない」という恐怖が同居するのが山の本質なのだと思います。

 

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